あちゃ〜な話

おならっきょ!
お久しぶりです皆様。

「いやあ、大きなお腹になったねぇ」
そう言って義母は私の腹を擦った。
そりゃそうだろう。
今日で妊娠71ヶ月目を迎える私は「早くおばあちゃんに会いたいね」とお腹の子に語りかける。するとまるで、こちらの声が聞こえているかのようにトントン、と胸の下あたりから返事が伝わる。夫が半ば呆れたように「このやり取りもいつまで続くことやら」と笑った。
夫とは趣味で通い始めたマタニティスクールで知り合った。当時は勝手がわからず、マタニティスクールには夫婦で参加しなければ成立しないものがあることを知らなかった私は、一人ポツンと壁の花と化していた。そんな時「もしかして、お一人ですか?僕もなんですよ。どうやらマタニティスクールってのは開かれた社会じゃないらしい」そう厭味ったらしく声をかけてきたのが今の夫、鉄郎だった。その時は仕方なくペアを組んだが、話をすると中々賢い、ユーモラスな男だった。その後付き合い出し、子供を授かったため結婚に踏み切った。
私の母の時代は妊娠は十月十日(トツキトオカ?)と、妊婦の個体差なく皆同じ周期で出産していたらしいが、今は生活環境や遺伝子の関係上、個体差がどんどん開いている。早い人でニ週間、遅い人で三十年ほどかかる人もいるらしい。しかしまあそれは極端な例で、だいたい平均六十ヶ月、約五年ほどで出産を迎える人が多い。私の子はいつ産まれてきてくれるのだろう、そろそろかな?そろそろだと良い。

ー60年後

「はい。今日はちゃんと食べられましたねー」

もう、限界だ。
私のお腹は狭い六畳のアパートの天井ギリギリまで、パンパンに膨れ上がってしまった。今では自分でご飯を食べることすらままならない。
この子を孕んでからもう何ヶ月、何年経ったのだろう。動けなくなってからは数えるのを辞めてしまった。もうこうなってしまえば、私の身体の中にいる生き物が自分の子である確信さえない。愛着なんてとうの昔に忘れてしまった。
夫は最後まで献身的に寄り添ってくれたが、二十年程前に先立った。
嗚呼、我が子よ、どうして出てきてはくれないんだね、嗚呼、、、私はもう、もう限界だ……。
そう思ったとき、彼女の身体に異変が起きた。破水だ。大量の水が噴き出し、玄関まで流れ込んだ。そして溺れて死んだ。